BY ミーモ · 2017年8月4日
バリ島東部カランアッサム県にあるトゥガナン村は、バリ島で最も有名なバリアガ(バリ先住民族)の村。特に工芸品のアタ製品、魔除けの布として知られるグリンシン(縦横絣。ダブルイカットともいう)は、トゥガナン村が生産地です。
↓いろいろな種類のアタ製品が天日干しされています。目が細かいほど高級とされ、強度が増すよう、また虫がつかないよう、何度も燻し作業をするなど、手間ひまをかけて作られます。
↓腰機を使って、グリンシンを織る村の女性。高度な技術を要し、織るのに長い時間がかかることでも有名です。
トゥガナン村はもちろんバリヒンドゥー教徒の村ですが、一般的に解説されるバリヒンドゥー教とは異なり、独自の暦であるトゥガナン暦によって計算されています。例えば、ウク暦に基づくバリヒンドゥー教の大きな祭事であるガルンガンやクニンガンはこの村には存在しません。しかし、同じ意味合いを持つ、先祖の降下や天昇するという祭礼はありますが、トゥンガナン独自のカレンダーに添っているので日付は異なります。また、サカ暦に基づくニュピも、一般のバリ人と同じ日には行われません。ただし、意図を同じとする静寂の日はあります。このように他にも一般的なバリヒンドゥー教とは異なる点が多いというのが興味深いところです。
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調査依頼その㊺ バリの先住民バリアガの住むトゥガナン村が知りたい!
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そんなトゥガナン村では、毎月儀礼が行われますが、特に第5の月のウサバ サンバという儀礼は、1ヶ月以上続く大きな祭礼で良く知られています。その祭礼のクライマックスといっていい儀式が、有名な「ムカレカレ」。パンダン・ドゥリという刺のあるパンダンの葉っぱを剣に、アタでできた盾を持って男性たちが戦います。
↓ムカレカレのある日は、多くの観光客で賑わうので、私は駐車スペース確保のため、早めに村に到着。アタや織物などの工芸品を各家庭で売っているので、個人宅は大抵オープンハウス(笑)
↓家の中では、女のコがウコンを磨り下ろしています。これをムカレカレで怪我した傷口に塗るんですって。トゥガナン伝統の傷薬ですね。
↓剣として使うパンダン・ドゥリが用意されています。葉っぱの両脇に細かい刺がありますよね。実はムカレカレの日に、落ちていたこの葉に足を引っ掛けてしまいました。刺の部分だけとれるので、指に刺だけが刺さったまま、イタタタと自分で抜きました。小さくて鋭いので、けっこう食い込みます。
ムカレカレがスタートする前の儀式が始まりました! 村の人たちが、ブレガンジュール(ガムラン隊)と一緒に村の敷地内を3周します。
↓先頭はこちら。トランスの入ってるおじさんがクリス(剣)を持っていて、なんだかちょっと不気味ですね。
↓正装衣装の男女です。男性は上半身は裸、腰布にグリンシンを巻いています。女性は上半身にグリンシンをまといます。トゥガナンを象徴する布です。
いよいよ、ムカレカレのスタートです。この日は舞台の上で戦っているので(舞台のない日もあるそうです)、写真も撮りやすいはずなのですが、なかなかどうして。。。。
↓こちらがムカレカレの様子。
↓村人たちはバレ・アグンの上から見物。いいなぁ〜。
↓見守るトゥガナン女子たち。戦う彼氏さんたちの勇姿に惚れ惚れ♡青春ですね(笑)
↓まだまだ続くムカレカレ。ムカレカレはインドネシア語では「プラン・パンダン」と言います。プランが戦争、パンダンが葉の名前。パンダンの戦いという意味ですね。
↓既に戦った男性の背中。よく見ると刺が刺さったまま!
↓首に直撃!ひぃ〜〜!
↓刺よりも胸のピアスの方がイタそうなんですが…(苦笑)
↓イタ過ぎて笑える?
↓村人たち以外の参加もOK。欧米人も何人が参加していました。
↓上半身傷だらけ。このヒト、何回戦ったんでしょう?
↓ムカレカレも無事に終了し記念撮影。白族と赤族に分かれていますが、日本の紅白みたいに組み分けされていたんですかね?どちらも晴れやかな顔が印象的です。
↓最後はムギブンと呼ばれる集団での食事です。ひとつの盛り料理につき4〜5人ずつで食べます。バリの人たちは、皆で作って一緒に食べることで、団結力を更に強めると聞いたことがありますが、トゥガナンでもそうなんですかね?
ムカレカレはこれで以上ですが、この後もまだまだ儀礼は続きます。
続いて紹介するのは、ムカレカレの前日に行われたアユナンの儀礼(?)です。
アユナンとはインドネシア語で「ブランコ」のことです。
↓こちらがアユナンに参加する若者たち。女のコだけかと思ったら、男のコもひとり混じっていました。みんな、ちゃんと正装しています。
↓こちらがそのアユナン。ブランコというよりはまるで観覧車のような形状ですね。
↓乗るとこんな感じ。ギーギーと音を立てて回るので、 私的にはおっかなかったのですが、乗ってるコたちは皆涼しい顔していました(笑)
↓ひとつのブランコが終わると次のブランコまで皆で移動します。これを3回くらい繰り返します。
↓一番高いところで10mくらい?四方向でバランスが保たれているので、一方向欠けるとジェットコースター並みのスゴい勢いで回ったりします。
ところで、このブランコの行為の意味を訊いてみましたが、いろいろな説があるようです。
マントラや経文が書かれた“マニ車”や“輪造”のように、回すことによってお経を読んだと同じように功徳を得られるのに伴い、アユナンを回転させることで何らかの行為の代行になるのではないかという説。その他、輪廻転生の象徴とか、“法輪”説とか、インドラ神の教えを尊ぶ“転法”説など…。
伝統的でシンボリックな行為ですが、その意味はあまり定かではないようです。
トゥガナン村のウサバ サンバの儀礼、いかがでしたか?
私は長くバリ島に住んでいますが、トゥガナンはいつ来ても独特の空気を感じます。それはバリ島がどんどん近代化していく中で、ここだけがトゥガナン暦に従って昔ながらの風習を重んじ、それを守りながらごく当たり前に生活しているからだと思います。
時間があったら、ぜひ訪れてみてくださいね。